部落問題とは?

概要

部落問題とは、部落差別によって生じた貧困や不平等など、すべての人間が人間として当然保障されるべき基本的人権(たとえば、平等な待遇を受ける、幸せに生きられる、自由を奪われない、など)を、被差別部落の人びとが奪われてきたという、社会的に解決されるべき社会問題のことです。

 

部落差別とは、被差別部落に居住する人びと、そこにルーツを持つ人びと、部落と関連する、あるいはみなされた人びとに対して、日常生活や、結婚・就職などの場面において、遠ざけ、見下し、仲間はずれにすることによって(権力者や多数派が)利益を得る行為、あるいはその存在を無視すること、さらにはそれらを容認する社会のしくみのことです。

歴史

 

被差別部落のルーツは江戸時代以前の身分制度にあります。被差別部落とは、穢れているなどとされてきた「穢多」「非人」等と呼ばれた人びとが居住している場所(部落)であるために、差別の対象となってきた地域のことです。

 

個々人に対する自由と平等が、基本的人権として保障されることが前提となっている近代社会において、差別はなくしていくべきものです。そのため、部落差別を生み出す社会を変革しようと、1922年に創立された全国水平社や、その後身組織である部落解放同盟などのような被差別部落出身の人びとのみならず、国・自治体行政・教員・企業・宗教団体・労働組合などを含め、これまで多くの人たちが努力を重ねてきました。

 

1965年には、同和問題の解決のための国による対策(同和対策)の方向性を示した同和対策審議会答申が出されます。1969年には同和対策事業特別措置法が制定され、部落差別の撤廃と部落・部落外の格差の是正をめざす特別対策のための予算措置がなされました。以降、2002年に一連の特別措置法の期限切れを迎えるまで、同和地区の生活環境の改善、社会福祉及び公衆衛生の向上及び増進、農林漁業の振興、学校教育及び社会教育の充実、人権擁護活動の強化など、さまざまな施策が実行されました。この間、各部落単位での差別をなくすための運動が広がりました。

 

その結果、近代以降、差別と貧困に苦しんできた部落(「同和地区」)の住環境は大きく改善し、学校教育・同和教育や市民啓発によって部落問題について学習した人の多くは、部落差別は不当な差別であると認識し、なくしていくべきものだという理解が広がってきました。 

今起きていること

ですが、1970年代以降、環境改善などの住環境整備が進むにつれて、同和対策事業に対する市民からの反発が大きくなるなど、部落差別の発生と解決の責任を部落の人びとに求める意識(自己責任・部落責任論)があります。100年前から比べると大きく改善しましたが、現在においても、恋愛・結婚に関する差別のほか、部落の場所を避けようとする意識を持ち、実際に避ける人は、残念ながら、知れば見過ごすことができないくらい存在します。

 

また、特措法期限切れ以降、部落問題は取り立てて問題にするほどのものではない、差別はもうないという誤解も広がっています。情報化社会の進展にともない、インターネット上で部落に対する偏見を拡散したり、部落の人・場所をアウティング(身元暴き)する行為なども問題となっています。これらの現実が、被差別部落の人びとや、部落差別をなくそうとしている人びとを苦しめる要因となっています。
(文責:りゅうし)