2015年6月6日  「部落のこと、子どもたちにどんなふうに伝えたいの?」

2015年6月6日に大阪の大阪市市民交流センター東淀川で、BH通算3回目となるイベント「部落のこと、子どもたちにどんなふうに伝えたいの?」が開催されました。西は鳥取、東は東京から、なんと36名もの方々がご参加くださいました!

 「親から子へ何をどう伝えるか」をテーマにしたトークセッション1では、部落出身者と結婚し現在二児の子育て中である岡村直哉さんをゲストに、昨年出産し親になったばかりのともえと、6歳と2歳の親であるたみ、ふたりのBHメンバーが、なぜ伝えたいのか、難しいことは何か、どんな風に伝えうるのかなどについて話しました。

 3人とも、子どもに伝えたいという想いは一致したものの、住んでいる場所も、環境も、パートナーとの関係もバラバラ。お連れ合いが部落の中でまちづくりをしているNPOにお勤めの岡村さんに対し、BHメンバー2人から「文化、コミュニティなどのポジティブ要素に『差別』をくるんで説明できるのが羨ましい。」という意見も出ましたが、それでも岡村さんは「家が部落の中にあるわけではないし、部落出身者である連れ合いは積極的に伝えなくてもいいんじゃないかという感じだし、その辺の距離感が難しい。」とおっしゃり、どんな環境の中でもそれぞれの難しさがあるのだということを改めて考えさせられるやりとりとなりました。

 また、「親が部落出身者でそのことをポジティブに受け入れて堂々としていたり、同様に考える友人たちが周りに多くいたりして、自分たちの価値観を陰に陽に子どもに伝えていて、子どもも一定受け入れていたとしても、学校や地域など出会う同世代や大人たちから、”あの親子は(少数派で)変わった人たち”扱いされて排除されるようなことがあれば、子どもは親と”世間”のギャップに混乱したり、孤立してしまわないか、という心配がある。」といった話も。   

 子育てが親だけでは出来ないのと同じように、「部落」を子どもに伝えることも親だけでは限界があります。子どもにより豊かに「部落」を伝えるには、学校や子どもの周りにいるすべての大人にサポートしてもらえるのが理想。というパネリストからのメッセージは、イベントに参加してくださった方たちだけでなく、すべての大人に届けたいメッセージでもありました。

  

  そんな親たちの話を受けて始まった第2部のテーマは「(義務教育段階の)学校では何をどう伝えるか」。大阪教育大学教授の森実さんをゲストに、尚絅学院大学准教授のりゅうしと、コアプラス代表のみどりんという、普段から教育に関わる仕事をしているBHメンバーが登壇。

 まず前提として、現在の小中学校での部落問題学習の現状について森さんから30年前と現在との調査結果をもとに「減ったと言わざるを得ない」とのお話がありました。

 

 その原因として、時代状況、政治状況など様々な要素が語られましたが、「部落問題学習は失敗してはいけない」と教える先生側が構えてしまっていることについてはすべての登壇者から指摘がありました。ただ、それは先生だけの問題ではなく、先生がバッシングを受けやすい今の風潮の中では部落問題に取り組むことがひとつのリスクになってしまっているのではないか、運動や地域が先生のチャレンジを後押ししたり育てていくようなスタンスの見守りが必要ではないか、という提言もされました。

 また、部落問題学習を受け取る側の児童・生徒について、森さんから流しそうめんを例えにしたこんな話が。

 

「何のフックもない、ピンポン玉みたいな学習者にいくらメッセージを発信しても、メッセージというそうめんはするすると流れて行ってしまう。何本かでもフックが立っているような状態に学習者がなっていれば、どんなそうめんでも引っかかる。子どもたちにフックをしかるべく立てる、子どもたちが自分自身のことをしっかり見られるようになることに、もっと力を注いでもいいかもしれないと思う。」

 

 部落問題学習というと、つい「何」を「どう」教えるのかという方法論を思い浮かべがちですが、それ以前に子どもたちが部落問題学習を受け入れられるための準備も非常に大切なのです。実はこれに近いことがトークセッション1の親パートでも「まずはこういうことを話し合えるような親子関係をつくることが大事。」と話されていました。親パート、学校パートを通して「受け取る側の子ども」との関係性や子どもの状態をちゃんと考えようという話が出たのは、とても意義のあることだったのではないかと思います。

 

 

ここまででなんと2時間!しかし、会場は熱気に包まれ、集中も途切れることなく第三部のワークショップへ!!

 

「子どもの周りの大人として何をどう伝えるか」をテーマに、親でも学校関係者でもないBHメンバー、みよとCからその難しさと可能性についての話があった後、みどりんのファシリテートのもと、参加者の中から「今日はこれを話したい!」と出てきた「部落問題学習の極意」「部落のアイデンティティって何?」など7つのテーマごとに分かれてのトークセッションがスタートしました。

参加者のみなさんのモチベーションが非常に高く、途中、ファシリテーターのみどりんから「今、スタートして1時間たちました!」と声がかかると、会場から「え~!もう?」の声が出るほど。最後は、自分たちのグループで話したことの中で①一番印象的だったこと②感じたこと・考えたことを紙に書き出し、全体でシェアしてイベントは終了となりました。

 イベント当日、会場にはBHメンバーの子どもたちも参加していました。この子たちも、いつか部落問題の壁にぶち当たることがあるかもしれません。でも、そんなときに「部落のことを考えに、あんなにたくさんの人たちが集まっていたな。みんな熱心に話し合っていたな。」と、このイベントの記憶が彼女らを支えてくれたらと願ってやみません。

 イベント終了後は、みどりんがオーナーを務めるコアークでの懇親会。こちらも大いに盛り上がり、こんな風に部落について語り合える人たちがいることを、とても心強く感じる一日となりました。

ご参加くださったみなさま、ありがとうございました!

(報告:たみ)