2016年2月24日 江戸東京博物館スタディーツアー

2016年2月24日、東京都にある江戸東京博物館(以下、江戸博)にて、BH初のスタディーツアーを開催しました。今回訪れた常設展は、徳川家康が江戸に入府してからの約400年間を中心に、江戸・東京の歴史と文化について紹介されています。

 

まずは、全体をざっと見ながら、部落に関する展示箇所を東京都人権プラザの職員でもあり、今回解説をお願いした坂井さんに案内していただいた後、

 (「町の暮らし」のテーマの中にある解説 「身分制度と差別」 「弾左衛門と賤民」)

 

(「産業革命と東京」の中には全国水平社のポスターなどの展示が)

 

学芸員の新田さんに江戸博が部落問題をどういうスタンスで扱っているのかを解説していただき、「開館当時はいなかったのでどんな議論があったのかはわからないが、江戸について説明する上で弾左衛門(※)は外せない。」「展示で紹介出来るような資料がないため、文字のみでの解説がほとんどになってしまっている。」といったお話を伺いました。

 

その後、再び坂井さんより、日本国内の他の博物館の人権に関する展示との比較や、江戸博開館準備段階でどんな議論があったのか、などのレクチャーがあり、参加者やBHメンバーで意見交換をしました。

 

関西出身の参加者からは「自分は学校の授業で部落問題を習ったが、東京の学校は関西ほど部落問題に取り組んでいない。少ない知識でこの展示をみても、きっと何のことかわからないのではないか。」アメリカ在住経験のある参加者からは「どこからも文句が来ないような抽象的な表現になっているのは、アメリカでは考えられない。逆に、この博物館の主張は何なのか、ポリシーは何なのかをはっきりさせないとクレームがくる。」との感想が、他にも「部落に関する展示をきちんとしていると聞いて来たが、実際に来てみると沢山ある展示の中に埋もれてしまい、特に印象にも残らないような展示になっている。」などの感想が出されました。

 

その上で、坂井さんから部落問題に関しての展示が好評だった他施設の例なども紹介され、「現状のまま江戸博のような大きな博物館が動くことは難しいが、周辺で小さい規模の成功を少しずつ積み重ねていくことで、こういう大きなところが動く可能性があるのではないか。」「小さい動きかもしれないが、今日のような目的で来館する人がいるということを学芸員が知ることも大事だと思う。」などという意見が出されました。

 

江戸博で部落問題がどう扱われているのか、というテーマは、社会が部落問題をどういう位置づけとしているのか、人にどう部落を伝えるのか、私たちがどういう社会を望むのか、という大きなテーマにもつながっていくものであり、単に一博物館の展示の問題としてではない視点での意見が交換される非常に刺激的な時間となりました。

 

(※弾左衛門…穢多頭と呼ばれ、江戸時代に関東全域の賤民身分の人びとを支配していた。世襲制で代々浅草に住み、賤民身分でありながらも権力と財力を持っていた。)

                                                                 (報告 たみ)